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砂防ダムのメリットデメリットを解説!砂防ダムの働きについても紹介

2022年12月29日

近年、土砂災害は大きなニュースになっています。
健康的な森林には土砂災害を防ぐ機能があるものです。
しかし、人の手で整備された人工林は手入れをしないと荒廃してしまいます。

荒廃した森林は木々が枯れてしまうので、雨を土砂から遮るものがなく災害が発生してしまうのです。
そこで、災害の防ぐために全国の山林に「砂防ダム」「治山ダム」が建設されています。

これらの名前は一度は耳にしている言葉でしょうが、役割や違いなどまではわからない方もいるでしょう。
そこで今回は、砂防ダムのメリット・デメリットや働きなどを解説します。

砂防ダムのメリットデメリットを解説!砂防ダムの働きについても紹介

砂防ダムとは?|土砂災害を食い止める

ニュースなどでも取り上げられるケースがあるので、砂防ダムをご覧になった方も多いと思います。
台風などで土石流による災害が発生すると取り上げられる場合があります。

一般的には貯水するダムではなく、土石流などを溜めるダムです。
土石流を堰き止めて下流の街に土石流の被害が広がらないようにする仕組みです。

日本国内には9万基を超える砂防ダムがある

砂防ダムは、山中の川や沢にたくさんあります。
一般的な水を溜める貯水ダムが国内に約2,700基建設されているのに対し、砂防ダムは約9万基設置されています.

そもそも上流からの土砂を貯めたり、川床勾配を緩和の目的で建設されたりするので、1つの川にかなりのダムが設置されているのです。
現在では、砂防ダムや治山ダムが設置されていない渓流はほとんどないのが現状です。

砂防ダムの種類|大きく分けて2種類

大きく分けて不透過型と透過型の2種類です。
「不透過型」は日常から土砂が貯まっています。
土砂が貯まっているので、河川の勾配が緩やかになり川底の侵食を防ぎます。

また、ダム内が一杯になっても、土砂が溜まっているので傾斜が緩やかで土砂災害時には土砂の一部がさらに溜まる仕組みです。
「透過型」の場合は、鉄格子やスリットのような形状なので、常日頃は河川の障害にはなりません。

そのために不透過型で説明したような、土砂を貯めて河川の勢いを緩やかにする効果は少ないです。
しかし、土砂災害が発生した場合は、岩や流木などが引っかかり土砂災害を抑えます。

砂防ダムと普通のダムの違い|溜めるものが違う

一般的なダムは、貯水ダムと呼ばれ、水を溜めるために建設されています。
目的は、発電や治水・利水を始め多目的に使われています。
一方の砂防ダムの目的は、土砂を溜める点です。

働きとしては、土砂を溜めるほかに、貯砂量の10〜50%の土砂を一時的に蓄えて調整したり、川床勾配を緩くして川の侵食の防止をしたりします。
それによって、災害の防止や下流の貯水ダムの堆砂を防げます。

砂防ダムの働き|下流域を守る

砂防ダムには、下流域の街を守るために「土砂の流れを調整する」「土石流をとらえる」などさまざまな働きがあります。
これらの働きにより、土砂の流出や水害を防止します。

ここからは、その働きについて見ていきましょう。

土砂の流れを調節する働き

不透過型の仕組みは以下の通りです。

1. 不透過型は、土砂で一杯でも効果は持続します。

ダムの上流では、土砂が貯まり川の勾配が緩くなると同時に川幅も広がります。

そのために水のスピードも遅くなるのです。

2. 大雨が降り、大量の土砂が流れてくると、川の勾配が緩やかになったダムの上流側で水の流れが遅くなるのです。

そして、すでに蓄積されているうえに一部の土砂がさらに貯まります。

3. 上部に貯まった土砂は、水の力で少しずつ下流に流れていきます。

そのあと、大雨が降るたびに再度2のように貯まっていくのです。

このように砂防ダムは、土砂が一杯でも効果が持続し、土砂の流出を防止できます。

土石流をとらえる働き

砂防ダムが土石流をとらえる働きの仕組みは以下の通りです。

  透過型 不透過型
1. 通常は水と土砂は下流に流れます ダムの上流側に少しずつ土砂が蓄積されます。

土砂を溜める量確保のため取り除くケースもあります。

2. 土石流が発生すると、土砂はダムに引っかかり止まる仕組みです。 土石流発生時、ダムは土砂を貯めて下流の被害を防止する仕組みです。
3. ダムに貯まった土砂などは取り除かなければなりません。 ダムに貯まった土砂などは取り除きます。

このような仕組みで土石流をとらえ、下流域を守ります。

砂防ダムのメリット

メリットは、ここまでさまざま述べてきました。
上流から流れ出る土砂を貯めたり、土砂の流れを変えたりして流れの勢いを弱めます。
それによって大きな石と小さめの石を振り分けて土砂災害の被害を抑える機能があります。

また、山裾を固定し、山の斜面の崩れを防ぐ働きも大きなメリットです。

砂防ダムのデメリット

数多くのメリットがある砂防ダムですが、もちろんデメリットもあります。
まず、生態系の分断です。
砂防ダムがあると、川から海への養分およびミネラルの供給を妨げてしまうので、海が痩せて、海草や魚介類などの生育に大きな影響を与えてしまいます。

また、渓流沿いの落葉など必要な栄養が下流に流れないので、ひどい場合は「磯焼け」と呼ばれる生物が生息しない死んだ海になってしまいます。
ただ、対策として魚道を併設していますので、魚道を魚が通ればこの問題は解決です。

もう1つのデメリットは、海岸線の侵食です。
砂防ダムを建設すると、土砂が供給されなくなりますので、海岸線が侵食されるなどの災害の危険性が高まります。
こちらも対策として侵食を防ぐために海岸線の工事が行われています。

まとめ

砂防ダムがあるおかげで土石流の被害が軽減される大きなメリットがあります。
しかしその一方で、そのしわ寄せが自然界に行っているのかもしれません。
自然界を守りながら、安全な社会を作るために、砂防ダムに関わる課題を理解し、改善していくのが重要です。

実際に砂防ダムを作らなければ、甚大な被害が発生してしまいます。
自然界への影響を最小限に抑えながら、砂防ダムの安全性を維持する必要があるでしょう。