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がけ崩れの責任は誰にある?過去の判例からケース別に紹介

2022年11月27日

予想もしなかったがけ崩れ、住宅の近くに急斜面があると土砂災害に遭う確率は高いです。

雨や台風などで引き起こるケースが多いのですが、天候が悪化したからといってすぐ発生するとは限りません。
大丈夫と思って過ごしていた直後、被害に遭うケースも珍しくないのです。

もし、がけ崩れが起きたら、責任は一体誰にあるのか疑問に思う人は多いでしょう。

そこで今回は、実際に起きた過去の判例から責任者や火災保険で補償できるのかなど、詳しく解説します。

がけ崩れの責任は誰にある?過去の判例からケース別に紹介

がけ崩れの責任を判例でチェック!

日本は面積がとても狭く、自然に囲まれた国のため、住宅地は平地や崖の上・下などさまざまな場所に建設されています。

たとえ平地であっても、数キロ先に山がある場合、がけ崩れの被害に遭う可能性はあります。

自然災害に遭わないために、自治体や土地の所有者はコンクリートや擁壁などで土砂災害を防止しています。

しかし、自然災害は予想以上の被害をもたらすケースも多く、完璧に防止できるとは限りません。

過去にも、がけ崩れによる被害で住宅が壊れたり命を落としたりとさまざまなニュースがあります。
被害に遭った人たちは、誰に責任を求めるのか、過去の判例をチェックしていきましょう。

自宅の裏山が崩れて命を落としたケース

住宅の裏山が、がけ崩れを引き起こし、住んでいた住民が命を落としました。

遺族は災害防止の施工工事や管理に瑕疵があり、自治体は避難勧告を行わなかったとして損害賠償を求めました。

しかし、裁判では業者が施工したのは落石防止を目的とした工事だったので、設置や管理に瑕疵はない。

自治体が避難勧告を出さなかったことが不合理で法律上では問題があるとはいえないという判決がくだされたのです。

客観的に見て、がけ崩れは予見できたとはいえず、責任は施工業者や自治体にあるとはいえないという結果でした。

丘陵地でがけ崩れが起きて車が壊れたケース

宿泊施設の駐車場が傾斜地である丘陵地で、豪雨によってがけ崩れが発生して車が壊れてました。
宿泊者は安全配慮に違反しているため損害賠償を求め裁判所へ提出。

裁判ではさまざまな寒天から、丘陵地に擁壁や土留めなどを施工しておけば事故は起きなかった可能性が高いと判断しました。

他にも、がけ崩れは緩やかに起きていたため、迅速に車の移動を促したり対応したりしていれば今回の事故につながらなかったと判決。

その結果、宿泊施設側に責任があると判決されました。

購入した土地の隣地のがけ崩れで命を落としたケース

土地と建物を購入した売り主が所有する隣の土地でがけ崩れが発生しました。

事故によって土地と建物を購入した人が亡くなり、遺族が売り主に損害賠償を請求。

購入後に発生した事故ですが、売り主は最低限の防災工事や安全性の確保をしていなかったため、注意を怠り過失があると認められて責任は売り主側であると判決がくだされました。

マンションのがけ崩れの責任は自分?

マンションの場合、自分が住む居住地とみんなが利用する共用スペースに分かれるため、どの部分でがけ崩れの被害に遭うかによって責任が変わる可能性が高いです。

例えば、分譲マンションの居住スペースでがけ崩れの被害にあった場合は、修繕などは自分たちで行うケースが多いでしょう。

一方、共用スペースで事故が発生した場合、マンションの所有者に責任があります。

実際に神奈川県の分譲マンションで土砂災害により死亡事故が発生しました。
事故は共用スペースで起こったため、「がけ崩れの危険性があり、安全対策を怠った」として管理者の責任であると受理されています。

私有地のがけ崩れの責任は誰?

私有地でがけ崩れが発生した場合は、土地の所有者や占有者の責任です。
ただし、状況によって自治体側が損害賠償などの責任を負うケースもあるでしょう。

例えば、私有地の所有者が遠方に住んでいて、大雨などが降ると災害の危険性があるとわかっているのに自治体は連絡や対応をしなかった場合。

このような状態で災害が起きたときは、国賠法1条1項により自治体の責任を問われる可能性があります。

私有地の責任が自治体というケースは稀ですが、状況によって誰が問題を負うのかは裁判所の判断で変わってきます。

がけ崩れの費用は火災保険でカバーできる?

住宅購入後、真っ先に検討するのが火災保険です。
火災保険は台風や地震などの自然災害を含め、さまざまなトラブルを費用面でカバーしてくれるサービスです。

がけ崩れのきっかけは大雨や台風が多いため、火災保険の対象として認められるケースが多いでしょう。

ただし火災保険を取り扱う会社によって、洪水や豪雨などの水害(水災)を外すことで保険料を安くできるプランもあります。
保険料は決して安くないため、コストを抑えるためにプランから外す場合があります。

がけ崩れの被害に遭っても保険があるから大丈夫と思っていたのに「水害は含まれていない」家庭もあるので気をつけましょう。

まとめ

がけ崩れの責任は、時と場合によって問われる人が違います。
自分が保有する山と土地・建物が被害に遭ったなら完全に自分自身ですが、このような環境の人は少ないでしょう。

全国では自然災害による責任について裁判が行われているので、判例を参考にして、もしもに備えておくことが大切です。