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電柱埋没の深さとは? 電柱の基礎知識や無電柱化について知ろう

2023年02月21日

普段何気なく目にしている電柱。
目に見える部分以外の埋没している部分も考慮すると、非常に大きな建造物です。
実際どの程度の深さまで埋没しているのか、倒壊の危険性はどの程度なのかといった点は知る機会も少ないため気になる方も多いのではないでしょうか。

また、近年では「防災」「安全・快適」「観光・景観」などの観点から無電柱化が推進されてきています。
電柱の埋没の深さ、無電柱化とはどのようなものなのか。
電柱に対する疑問をお持ちの方に向けてお話ししていきます。

電柱埋没の深さとは? 電柱の基礎知識や無電柱化について知ろう

電柱埋没の深さと強度について

街中を見渡せば目にする機会の多い電柱。
非常に重く大きいため、倒れてしまった場合どうなってしまうのかと心配になった経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

また、電柱に対しての知識を身につける機会は少なく、質問されても答えられない方がほとんどかと思います。
ここでは、電柱の全長や基礎部分である根入れについてなど、電柱の基本的な知識についてお伝えしていきます。

電柱の全長

電柱の全長は12~16m程度が一般的で、最も多いのは14mとされています。
電柱の長さは14mありますが、普段目にしている電柱の長さは14mもありません。
つまり、目に見えない埋没している部分があるのです。

この埋没部分については、次でお話しします。

埋没部分の計算方法

電柱の地面に埋没している部分は根入れと呼び、長さが長くなるほど地面からの支持力が大きくなり強度が確保されます。
電柱の根入れの深さは電気設備技術基準で定められており、全長15m以下の電柱は全長の6分の1以上、全長15m以上の電柱は2.5m以上とされています。

電柱の表記について

電柱の呼び名(表記)は、長さ-末口径-ひび割れ試験過重の3つの数字で表されます。
長さとは全長を意味し、末口径とは電柱の細い方の直径を意味します。
電柱は土台部部分が太く、上に進むにしたがって細くなる形状をしているのです。

ひび割れ試験荷重とは、対象となる電柱が持つ強度を意味します。
頂部から25cm下がった位置に加えても問題のない水平荷重を表しています。

電柱のサイズと根入れの関係値

代表的な太さ・サイズの電柱と根入れ値を一覧表にまとめてみました。
さらに詳しい情報については、東海コンクリート工業株式会社のホームページに記載されています。

名称・呼び名 長さ(m) 根入れ長さ(m) 設計重量(kg)
10-19-2.5 10 1.7 665
12-19-3.0 12 2.0 850
12-19-5.0 12 2.0 905
14-19-5.0 14 2.4 1,115
16-19-5.0 16 2.5 1,340
14-19-7.0 14 2.4 1,350
16-19-7.0 16 2.5 1,745
16-19-10 16 2.5 1,935

電柱で注意すべきなのは設計重量の重さです。
軽自動車よりも重量があるため、万が一倒壊した場合などは非常に危険です。
このように根入れの長さは規定で定められているため、基本的には倒壊の心配はありません。

電柱を建てる!建柱工事とは

ここでは電柱を建てる、穴掘り建柱工事の流れについてお話しします。

ステップ1.

まずは、穴堀建柱車のクレーン機能でコンクリート製の電柱をトラックで運搬します。
電柱の運搬には、特別な制限外積載許可が必要です。

ステップ2.

電柱を埋めるために、道路の舗装を削岩機で粉砕します。
上下水道といった埋蔵物の有無をスコップ等で確認します。

ステップ3.

確認終了後、穴掘建柱車で柱を固定し、アースオーガと呼ばれるパーツで採掘作業を進めていきます。
採掘する深さは、電気設備技術基準で定められた深さで行います。
前述したように、15m以下は全長の6分の1、15m以上は2.5mです。

ステップ4.

採掘作業の完了後、アースオーガを格納しクレーン機能で電柱を吊り上げ、周辺の安全性を確認しつつ採掘した穴に埋め込みます。

ステップ5.

電柱が無事に建てば、位置や垂直状況を確認し埋め戻し作業を実施します。

ステップ6.

電柱の傾斜や沈下を防ぐために、根枷ブロックと呼ばれる補強材を設置します。

ステップ7.

採掘した土や砕石を使って埋め戻しを実施し、締固めを行います。
地盤の状況や地質によっては水締めと呼ばれる方法を実施する場合もあります。
埋め戻し・締固めが完了したあとにアスファルト舗装材を使って舗装し工事完了です。

工事完了後に清掃活動を実施し、すべての行程が完了します。

電柱が消える!?無電柱化とは

東京23区や大阪市、名古屋市などで徐々に進められている無電柱化の動き。
なぜ電柱をなくすのでしょうか?電柱が立っているリスクと、無電柱化の課題について解説します。

ここでは、電柱のリスクや無電柱化を進めるための問題点についてお話しします。

電柱のリスクを考える

日本は地震大国と呼ばれており、過去にも記録的な大地震が何度も起きています。
また、台風などの自然災害のリスクも高いです。
こうした自然災害によって電柱が倒壊した場合、停電や家屋の損壊、道路の通行止めといった甚大な被害に遭うリスクは非常に高いです。

電柱の重さは600kg以上もあり、軽自動車よりも重量があります。
そのため、倒壊した場合は撤去空復旧まで時間を要してしまうのです。
その間、電気が止まってしまい周辺の人々の生活が困難になってしまいます。

無電柱化の課題は舗装撤去工事

無電柱化とは、道路から電柱をなくす働きです。
道路の地下空間等を活用し、電力線や通信線などをまとめて収容する電線共同溝等の整備による電線類地中化や配線により行います。

無電柱化を進めるためには既存の電柱の撤去工事、道路の舗装を撤去し地中に収容する工事など大規模な工事が必要となります。
そのため、日中での工事の実施は難しく夜間に集中して作業を実施しなくてはなりません。
対象となる地域住民それぞれに必要性を伝え、了承を得る必要があります。

実施まで非常に時間がかかってしまいます。

まとめ

電柱は目に見えている部分だけではなく、見えない埋没部分、土台の部分が非常に重要です。
日本は地震大国であり、いつ何時大地震が起きるか分かりません。
深さが確保されしっかりと埋没していればそれだけ倒壊のリスクは避けられます。
とはいえ、地上から生える形状であればリスクの回避は現実的に難しいです。

そのため、近年では無電柱化の動きが進められています。
「防災」「安全・快適」「観光・景観」の観点からも利点が多いと評価されているのです。
この記事が電柱に対する知識を身につける役に立ち、無電柱化を考えるきっかけとなれば幸いです。